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みんな、散り散りになっていった。
俺は緑象に行くが、テニス部では他に行くやつはいない。他の部員もそう。全員が全員、違う高校に行く。入試も終わり、何もかも希望に進む筈だ。県内の学校に行く部員も沢山。家が近い奴らも一杯いる。離れ離れ?そんな訳はない。
「卒業おめでとう。」
ステレオタイプな「切ない」言葉が、喉を絞めた。
まるで今生の別れのような気がした。
ポンと、肩が叩かれる。
「石田は、このあとどうするの?」
「おお、手嶋か。・・・どうしようかな・・・受験終わったし勉強はしたくないなあ。それに騒げるテンションでもないし。」
手嶋真樹夫。同じ小学校、同じ中学、同じ高校に進学する友達。手嶋は顎を斜め45度に上げ、うっすら銅色に染まり始めた空を見上げた。
「迫田は?お前いつも迫田と一緒だろ?」
「迫田は用事があるらしい。・・・暇だな。」
空気を読まず、近くの犬がワンと吠えた。敵意を剥き出しにした犬の声も、哀愁を孕んだ声に聞こえる。
「全部、終わったな。」
どちらが言ったか一瞬分からなかった。手嶋が言ったらしい。
同じことを考えていた。始まりじゃなく、終わり。
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