1人が本棚に入れています
本棚に追加
「他の部員もさ、やっぱテニスすんのかな?」
手嶋が言う。勿論俺はやる、と確定している。テニスが一番楽しいし、これからもやりたい。第一緑象テニス部には、高校テニス界の超有名人で超実力者がいる。入らない手は無い。
「みんなやるだろうな…多分。」
「じゃあ、みんなライバルになるのか。」
「ああ、そうだろうなあ…。」
いつの間にか雲に、じんわりと赤が染みていた。
「まあまず、全員志望校に受かれば良いけどな。あ、俺こっちだから。じゃあな。」
「うぃーす。」
T字路を手嶋は右へ、俺は左へ曲がる。視界から人が消えて、俺は一人になった。春休み初日の予定も無く、ちょっと前までの騒がしい日々に置いてけぼりを食らったような気分で、アスファルトの道の横を歩いていた。赤い光は、しつこく寂しさを演出していた。
最初のコメントを投稿しよう!