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「――ヒカル様」
「ユーリか……」
不意に声を掛けられ、振り返った私の目に、鮮やかな赤のスーツを着た金髪の女性が、小脇にスケジュール帳を携え、頭(こうべ)を垂れていた。
彼女の名は、《ユーリ=マクドゥエル》。
私の秘書であり、助手でもある。
「これよりバフォメット社の社長と会談の御時間ですが……」
「――もうそんな時間か」
「ご気分が優れないようですが、大丈夫ですか?
キャンセルして、後日にして頂きましょうか?」
私の顔色が優れないのを察知したからか、彼女はそう言って、私の顔を覗き込んでいた。
「――いや、大丈夫だ。
彼とは、1ヶ月も前からの約束だし、頼んでいた情報も確認したいからね……」
私は彼女を伴い、彼が待つホテルへと、車を走らせた――。
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