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ホテルの最上階の一室――。
僕等の前に立つ屈強なガードマンが、その身体に見合わない程繊細に、《コツコツ》と扉を小さく叩き中の様子を伺う。
「――どうぞ……」
部屋の中から、返答が返ってくる。
「――社長。
天宮様がお着きになりました」
中に案内された僕達は、その部屋の奧に、車椅子に乗る一人の初老の男性を目にする。
「――会長お待ちしておりました」
男性はそう言って、僕に席を勧めた。
「すみませんね。
父の代から我が社に尽くして頂いている貴方に、この様な事を頼んでしまって――」
「貴方のお父上に御世話になった事を思えば、このぐらい、お安い御用ですよ」
そして彼は、屈託の無い笑顔で、僕に微笑んだ。
彼は、《リュウ=バフォメット》。
今は亡き父の友人であり、そして僕の良き相談役である。
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