しょっぱい話。

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不自然なくらいハッキリと目が覚めて、私は汗だくで夢の内容もしっかり覚えていました。 部屋も高層マンションでは無く、川の側のアパートに変わっています。 私にはとてもただの夢だとは思えませんでした。 私はすぐに携帯をとると母親に電話しました。 今度は携帯が素直に使えました。 母親はたいそう心配して、塩をまいて神社に除霊しに行きなさいと言いました。 私は頷いて電話を切りました。 その時私は退職を決めてからも混沌としていた後悔や気持ちの迷いを捨てました。 そして二ヶ月後、私は仕事を辞め、実家を継ぐために帰って来ました。 新しい生活は驚くくらい順調です。 でもあれは何だったのだろうと今でも考えてしまいます。 情緒不安定だったから悪い夢を見たんだと思うのですが、寝る前の無人のインターホンが耳に残っています。 もしかしたら私の弱い心が彼女を招き入れてしまったのかもしれない。 そんな風に思います。 人生って不思議なことがあるもんなんですねぇ。 自分が今まで知らなかっただけで、常識じゃ考えられない未知な出来事は普通にゴロゴロ転がっているもの。 私がその事を更に深く感じいるようになったのは、9年ぶりに屋久島に住みはじめてからのお話になります―――。 〈しょっぱい話 完〉
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