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「ふぁ……ん」
不意に出てきた欠伸をかみ殺す。
その拍子に額から汗が流れ、つぅ、と頬を流れた。
制服は夏服に変わっていて、薄手の半袖シャツにリボン、そして紺色のスカートだ。
それなのに身を焦がすかのような暑さは変わらず、私は乱暴に手の甲で汗を拭った。
というのも、今は全校生徒が体育館に集められ終業式の真っ最中なのだ。
普段は姿を見せない三年生や校長先生が見れる日だが……正直どうでもいい。
取り立てて特徴のない校長先生の話は無駄に長い。
更に、曲がりなりにも進学校である白神高校の三年生は、受験を控え、既にピリピリとした空気を醸し出していた。
そんな奴らと終業式だ。
気が滅入るに決まっているだろう。
「……であります。からして……」
校長の挨拶はまだ続くようだ。内容は受験生に向けてらしい。
しかしなんというか、当たり障りのない事しか言わない。
……もう少し良いことは言えないのか?
まったく……なんで校長という生き物は、意味もなく長い話が好きなんだろうな……。
内心で悪態をつきながら、私は気づかれないように小さく溜め息を吐いた。
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