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「……という訳で皆、楽しく夏休みを送ってくれ。また始業式で元気な姿で会えるようにな。くれぐれも怪我のないように……」
成美先生の言葉がそこで一度切られる。
クラスの皆は今か今かとばかりに、体が小さく揺れていた。
そんな様子に、成美先生はニヤリと口元を歪ませ……。
「よしっ!解散だ!青春を謳歌してこい!」
『うぉおおおお!さようならぁああああ!』
ガタガタガタガタ
ドダダダダダダダダ
盛大な音をたて、皆一様に立ち上がり、ワーキャーと騒ぎながら教室を出て行った。
一気に人がいなくなった教室を見て、私は痒くもない頭を軽く掻いた。
……そんな急ぐ事もないだろうよ……。
教室に残ったのは成美先生に、私と海人……そして……。
「雪人ー。お前は行かなくていいのか?」
小説をジッと読んでいた雪人に、そう問い掛けてみる。
すると、ゆっくりと私に視線を向けた後、パタリと小説を閉じた。
その表情はまさに無表情。
相変わらずだなぁ、と小さく呟いた。
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