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雪人はそのまま小さく頷くと、そそくさと帰る準備をしだした。
彼は柳沢雪人。
無口で無表情でクラスでも浮いている存在である。
しかし、その無表情の中の微かな表情はやわらかく、本質はとても優しい子だ。
ちなみに海人と双子らしい。
二人の過去はチラリと聞いた事があるが、まだまだ何もわからない。
とはいえ聞こうとも思えないが……もしも海人や雪人が話したくなったら、受け止めてやろう、ってくらいは思ってる。
「……よし、じゃあ帰ろうか」
雪人が帰る準備を終えたのを見計らい、言葉をかける。
ゆったりと立ち上がり、ゆっくり教室のドアに向かって歩いて行った。
「そうですね。ふふっ、夏休みだなんでワクワクしちゃいますね」
「………………ん……」
鞄を持った海人と雪人がそれに続いた。
「三人とも、怪我しないように気をつけるんだぞ?それじゃ、さよなら」
「はーい、成美先生もお元気で。さようならー」
背後からかけられた声に、私も同じような調子で返す。
そして、二人を引き連れ、教室を出て行った。
「あれ?そういえば彼方は?」
「先刻の方々が担いで行っちゃいましたよ?」
……ドンマイ彼方。
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