追憶

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バレンタインデー 俺には昔から馴染みのない響きだな。 これでも昔から硬派だったんだぜ。 だから女には縁がないんだろうな。 もっとも生きる意味などなかった頃には関係なかったし、だからいつでも子供らの為ならいつでも自分の存在など投げだせるのだから、 ある意味世の中とはよく出来てるもんだ。 しかし別れた嫁とは10年程一緒にいたが、そんなイベント関係ないのはなんかヒドイな。 俺はアレの事をどれだけ分かっていたんだろう? ずっと愛してくれてたのは本当だろう、 何より憎んでいたのも本当だろう。 俺には今でも分かっていないんだろうな。 もちろん分かった振りして生きてるけど。 答えをださなきゃ前に進めないのは、 俺の取得だろうか、欠陥だろうか。 しかしこんな日にまた深夜に自転車漕いでる俺は案外弱い人間なのかもしれないな。 「そらちゃんいる?」 久しぶりに俺はネオンをくぐっていた。 「あいにくですが。」 いつもの気の弱そうな男が申し訳なさそうに謝罪を口にした。 「そっかあ残念」 実を言うとそれは半分は嘘だ。 そらに彼氏がいて、今日は店にいないことは電話で聴いていた。 もちろん一縷の望みを持っていないわけではないが、どちらかと言うと今日は誰でもよかった。 そらに感じた感情の動きを他と比較したかったのか、硬派気取りの俺にもヤキがまわっちまったのか。 多分両方だ。 「愛です。」 こんな日だ。仕方ない。 それでも俺はいつものように、他愛ない話を始めたが、少々天然の入った彼女はそれこそどうでもいい話を延々と繰り返した。 「また来てね。」「また来るよ。」 いつもの別れを告げたのはたっぷり二時間も過ぎてからだった。 子供達のお土産にたくさんのチョコを持たされた俺は少々げんなりしながら店を後にした。 やはり誰にでも感じるもんじゃないもんだな。 そらはどうしてるのかな? しかしこの日の事が後日思いもよらん波紋を呼ぶ事になろうとは神ならぬ身にはわかろうハズもなかった。
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