1章「出逢い」

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  坂本さんは篠夏ちゃんをみて、突然険しい顔つきになって篠夏ちゃんに言った。 「今から家に送るわ…こんな事は言いたくないけど、あなたは一般人、日和は芸能人なの。 こういう事でスキャンダルにされると困るのよ… 解るわよね?」 篠夏ちゃんは黙ったまま俯いて、再び小さな声で返答した。 その返答は、僕も坂本さんも思いもしなかった返事だった… 「…かっ…帰りたく…ない…です」 坂本さんは溜息をつき、時計を一度確認して再び篠夏ちゃんに説明した。 「あなたの家庭の事情は知らないわ…だけどね? あなたをここに泊める事は出来ないわ。だから私の――」 「良いよ、泊めても」 僕の言葉に反応した坂本さんは、驚きを隠せない様子で僕を見た。 自分も、気づいたらこんな言葉を言っていた… 僕は理由は無いけど、少しでも篠夏ちゃんと話がしたいと思っただけ。 ただ1人の人間としてね。 「日和っ」 「ここは僕の家でしょ?僕が何をしようが、事務所・坂本さんには関係無い」 「でもっ」 「坂本さん……僕はもう、泣き虫な子供じゃないよ 僕の人生だって1人で決められる…だからさ、お願いだよ 1日だけ。 篠夏ちゃんを僕の家に泊める…その後は坂本さんに任せるからさ」 僕はにっこり笑って言うと、坂本さんは呆れたように笑い、了承してくれた。 一応これから僕は仕事だから、事務所に向かう。 だけど、さすがに篠夏ちゃんを仕事場には連れて行けないから、篠夏ちゃんは僕の家でお留守番だ。 「じゃ、行くわよ」 「篠夏ちゃん、お留守番宜しくね?」 「…はい」 「行って来ます」 久しぶりだな。 誰かに「行って来ます」って言ったの… 何か…嬉しい、かも。 「…ふふっ」 「どうしたの?」 「なーんにもっ」 「…変な子ね」 僕はこれから始まる新しい生活が、楽しみで仕方なかった。  
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