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坂本さんは篠夏ちゃんをみて、突然険しい顔つきになって篠夏ちゃんに言った。
「今から家に送るわ…こんな事は言いたくないけど、あなたは一般人、日和は芸能人なの。
こういう事でスキャンダルにされると困るのよ…
解るわよね?」
篠夏ちゃんは黙ったまま俯いて、再び小さな声で返答した。
その返答は、僕も坂本さんも思いもしなかった返事だった…
「…かっ…帰りたく…ない…です」
坂本さんは溜息をつき、時計を一度確認して再び篠夏ちゃんに説明した。
「あなたの家庭の事情は知らないわ…だけどね?
あなたをここに泊める事は出来ないわ。だから私の――」
「良いよ、泊めても」
僕の言葉に反応した坂本さんは、驚きを隠せない様子で僕を見た。
自分も、気づいたらこんな言葉を言っていた…
僕は理由は無いけど、少しでも篠夏ちゃんと話がしたいと思っただけ。
ただ1人の人間としてね。
「日和っ」
「ここは僕の家でしょ?僕が何をしようが、事務所・坂本さんには関係無い」
「でもっ」
「坂本さん……僕はもう、泣き虫な子供じゃないよ
僕の人生だって1人で決められる…だからさ、お願いだよ
1日だけ。
篠夏ちゃんを僕の家に泊める…その後は坂本さんに任せるからさ」
僕はにっこり笑って言うと、坂本さんは呆れたように笑い、了承してくれた。
一応これから僕は仕事だから、事務所に向かう。
だけど、さすがに篠夏ちゃんを仕事場には連れて行けないから、篠夏ちゃんは僕の家でお留守番だ。
「じゃ、行くわよ」
「篠夏ちゃん、お留守番宜しくね?」
「…はい」
「行って来ます」
久しぶりだな。
誰かに「行って来ます」って言ったの…
何か…嬉しい、かも。
「…ふふっ」
「どうしたの?」
「なーんにもっ」
「…変な子ね」
僕はこれから始まる新しい生活が、楽しみで仕方なかった。
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