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「内容はこんな感じに進めて行きます。
それでは、遅れましたが自己紹介をしようか」
監督の藤沢さんが台本を閉じながら言った。
僕は入る時に名前を言ったから後回しにされた。
最初は僕の相手役をする、咲乃真奈役の子から始まった…
「咲乃真奈役の宮根遙香です。中3です。宜しくお願いしますっ」
ふわっとした笑顔が印象的な宮根さん。
最近流行ってる、森ガールがピッタリな女の子だ。
「浅野千佳役の堤秋那です!中3で遙香とはマジの親友なんで、頑張りまっす!!」
ポニーテールが似合う、元気な女の子。
カラフルな服が彼女を引き立てていた。
そして青山君と僕も自己紹介を終え、今日の打ち合わせは終わった。
僕の仕事はこれでお終い。
夜の9時過ぎだから、家に着くのは10時過ぎか…
僕はふと、篠夏ちゃんのことが気になった。
まだ寝てないのかな?
ご飯は食べたのかな?
お風呂は入ったのかな?
何て疑問が、僕の頭の中を交差した。
「…電話…してみよっかな」
僕は携帯のアドレス帳を開いて、自宅の電話番号を選択して、発信してみた。
1コール…2コール…
やっぱり出ないかなと思い、電話を切ろうとしたら…
「…ひ、日和…君…ですか?」
少し震えた声で、僕の名前を呼んだ。
あ、篠夏ちゃんだ。
何となく、 胸が高鳴った。
「うん、日和だよ。電話出るの…迷った?」
「あ…はい。余所の家だし…迷惑…かなぁと」
ぎこちない敬語。
僕はクスッと軽く笑い、篠夏ちゃんにさっき思った疑問をまとめて聞いてみた。
「あのね?…ご飯食べた?後、お風呂入った?…電話に出たから、まだ寝てないか…」
「えっと…ご飯はまだです…お風呂も…まだです。
後、まだ…寝てない、です」
たくさん質問されて、少し焦ったみたい。
最後何かカミカミだし…
でも、何かいいな。
こうやって誰かと電話するの久しぶりだった。
゙あの日゙からずっと、誰とも連絡を取っていなかったからな…
何か、くすぐったい。
「じゃ、僕が何か作ってあげるよ」
「日和君の…手料理?」
「うん…嫌?」
僕がこう聞くと、篠夏ちゃんは数秒も待たずに返答してきた。
「ううんっ食べたい!!…です」
「ふふ…りょーかい!」
そう言って、電話を切った。
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