1章「出逢い」

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  「内容はこんな感じに進めて行きます。 それでは、遅れましたが自己紹介をしようか」 監督の藤沢さんが台本を閉じながら言った。 僕は入る時に名前を言ったから後回しにされた。 最初は僕の相手役をする、咲乃真奈役の子から始まった… 「咲乃真奈役の宮根遙香です。中3です。宜しくお願いしますっ」 ふわっとした笑顔が印象的な宮根さん。 最近流行ってる、森ガールがピッタリな女の子だ。 「浅野千佳役の堤秋那です!中3で遙香とはマジの親友なんで、頑張りまっす!!」 ポニーテールが似合う、元気な女の子。 カラフルな服が彼女を引き立てていた。 そして青山君と僕も自己紹介を終え、今日の打ち合わせは終わった。 僕の仕事はこれでお終い。 夜の9時過ぎだから、家に着くのは10時過ぎか… 僕はふと、篠夏ちゃんのことが気になった。 まだ寝てないのかな? ご飯は食べたのかな? お風呂は入ったのかな? 何て疑問が、僕の頭の中を交差した。 「…電話…してみよっかな」 僕は携帯のアドレス帳を開いて、自宅の電話番号を選択して、発信してみた。 1コール…2コール… やっぱり出ないかなと思い、電話を切ろうとしたら… 「…ひ、日和…君…ですか?」 少し震えた声で、僕の名前を呼んだ。 あ、篠夏ちゃんだ。 何となく、 胸が高鳴った。 「うん、日和だよ。電話出るの…迷った?」 「あ…はい。余所の家だし…迷惑…かなぁと」 ぎこちない敬語。 僕はクスッと軽く笑い、篠夏ちゃんにさっき思った疑問をまとめて聞いてみた。 「あのね?…ご飯食べた?後、お風呂入った?…電話に出たから、まだ寝てないか…」 「えっと…ご飯はまだです…お風呂も…まだです。 後、まだ…寝てない、です」 たくさん質問されて、少し焦ったみたい。 最後何かカミカミだし… でも、何かいいな。 こうやって誰かと電話するの久しぶりだった。 ゙あの日゙からずっと、誰とも連絡を取っていなかったからな… 何か、くすぐったい。 「じゃ、僕が何か作ってあげるよ」 「日和君の…手料理?」 「うん…嫌?」 僕がこう聞くと、篠夏ちゃんは数秒も待たずに返答してきた。 「ううんっ食べたい!!…です」 「ふふ…りょーかい!」 そう言って、電話を切った。
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