1章「出逢い」

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  やけに静かな部屋。 まるで誰もいない感じ… 少し焦りつつ、冷静を保ちながら僕はリビングに向かった。 「ただいまぁー……?」 ボールみたいに丸まっている篠夏ちゃん。 寝ちゃったのかなぁと思い、近寄ってみると…篠夏ちゃんの左手首から、血が滴っていた。 僕は勢い良く篠夏ちゃんの左手首を握った。 「止血しなきゃっ」 「離してっ!!」 篠夏ちゃんが勢い良く僕の手を振り払う。 篠夏ちゃんは僕が誰だか理解していないのか、両手で身を守るように体を抱えながら、小さな声で言う。 「もう…悪いこと、しないから…だから、痛いのやだ。 痛いの、は…やだ」 僕はふと、篠夏ちゃんの足に目をやった。 普段みる女子高生より少し長いスカートから見える白い篠夏ちゃんの足には、無数の痣があった。 Yシャツから見える手には、無数の傷跡。 僕の頭にはある二文字の漢字がよぎった… ―――゙虐待゙ 僕はゆっくり篠夏ちゃんに近づき、優しく彼女を抱きしめた。 篠夏ちゃんの身体は、震えていた。 「大丈夫。何もしないよ……大丈夫、大丈夫だから」 篠夏ちゃんは目を閉じて、僕に身体を預けた。 頬に伝う涙を指で拭き取り、僕は篠夏ちゃんをソファーに寝かせた。 戸棚から救急箱を取り出し、篠夏ちゃんの左手首の応急処置をした。 スースー寝息をたてて寝る彼女を見て、僕は軽く息を吐いてから、キッチンに立った。  
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