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やけに静かな部屋。
まるで誰もいない感じ…
少し焦りつつ、冷静を保ちながら僕はリビングに向かった。
「ただいまぁー……?」
ボールみたいに丸まっている篠夏ちゃん。
寝ちゃったのかなぁと思い、近寄ってみると…篠夏ちゃんの左手首から、血が滴っていた。
僕は勢い良く篠夏ちゃんの左手首を握った。
「止血しなきゃっ」
「離してっ!!」
篠夏ちゃんが勢い良く僕の手を振り払う。
篠夏ちゃんは僕が誰だか理解していないのか、両手で身を守るように体を抱えながら、小さな声で言う。
「もう…悪いこと、しないから…だから、痛いのやだ。
痛いの、は…やだ」
僕はふと、篠夏ちゃんの足に目をやった。
普段みる女子高生より少し長いスカートから見える白い篠夏ちゃんの足には、無数の痣があった。
Yシャツから見える手には、無数の傷跡。
僕の頭にはある二文字の漢字がよぎった…
―――゙虐待゙
僕はゆっくり篠夏ちゃんに近づき、優しく彼女を抱きしめた。
篠夏ちゃんの身体は、震えていた。
「大丈夫。何もしないよ……大丈夫、大丈夫だから」
篠夏ちゃんは目を閉じて、僕に身体を預けた。
頬に伝う涙を指で拭き取り、僕は篠夏ちゃんをソファーに寝かせた。
戸棚から救急箱を取り出し、篠夏ちゃんの左手首の応急処置をした。
スースー寝息をたてて寝る彼女を見て、僕は軽く息を吐いてから、キッチンに立った。
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