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クレア.1
身体中が血まみれだった。どこかの獣に襲われて目が醒めた。
わけもわからないまま腕をかじられたが、通りすがりの何者かが獣を倒してくれた。
「君の名前は?」
スーツを着た男だった。周囲の樹海景色には全く不釣り合いな格好で正直不気味だったのだが、助けてくれた事には変わりない。
「…クレアよ」
どんな怪我でも瞬時に治せる。服に付いた血は私の物だが、傷口は塞がっていた。
いや、正しくは「元に戻った」である。
傷ができても傷口は残らない。痕が残らないのであれば、それは戻ったという表現を使うべきだ。
「私はネイサン」
ネクタイを右手でぎゅっと上げ、クレアの血を見て駆け寄ってきた。
「怪我をしたのか?」
「大丈夫よ。あなたはここで何を…いいえ、ここはどこ?」
「わからない。歩けるかい?」
二人は一切記憶がない事を不思議に思いつつも、何かこの状況を理解できるような手掛かりを探し始めた。
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