第1章

5/12
前へ
/109ページ
次へ
マット.1 危うく溺死するところだった。 彼は警官の服装をし、ホルダーには一丁の銃が納まっている。 塩分が含まれていないので、ここは湖か何かだろう。 大型の岩がそこら中に転がる浜辺まで、必死に泳いだ結果だ。命はまだある。 しかし何も覚えていないところを見ると、記憶障害に陥った可能性がある。 俺はどうしたんだ?事故にでも遭ったのだろうか? 湖と思しき水溜まりは周囲の山々をまるごと映写し、美しかった。 「これがただの湖なら、川があるはずだ」 一先ず上流を目指そう。 考えに考え抜いた己の道標が、これだった。 制服の上着を脱ぎ、両手で絞ると水が勢い良く垂れた。 ゴツゴツの湖沿いを少し歩くと、川が見えてきた。 ここで彼は何かを聞いた。 『ここはどこだ?何も覚えていない』 自分の考えと合致しているこの男の声は、マットの道標の先から聞こえた。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加