第1章

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ピーター.1 目を閉じ、心を開く。 そうすれば前に進むべき方向がわかるんだ。 自分がどこから来たのか。何者なのか。ここはどこなのか。 目の前を流れる美しい小川は、そんな彼を静かに見守っていた。 しばらく記憶の引き出しを漁るために心を開くという、殆ど謎に満ちた行動を続け、閃きを待った。 意外に早く、反応があった。 僕は何者だ? そんな問い掛けを自分自身に投げたところ、頭の中に「僕は何者だ?」という声がこだました。 ピーターは周りを見渡す。森林を割って流れる小川と遠くの山。 もう一度目を閉じ心で声を出してみる。 「僕はピーター」 先程と同じ方法で頭の中に帰ってきた。 まるで心と頭でキャッチボールをしているような感覚だ。しかしだとすれば心とは何だろう。 頭と連絡?バカな。 自分に何かを言い聞かすのとは別な感覚だ。 一時的に他の場所を経由し、再び戻ってくる。まるで電話のよう。 奇妙な体験だ。 再度目を開けると、小川の下流に一人の男がこちらへ向かって歩いていた。
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