第1章

7/12
前へ
/109ページ
次へ
ヒロ.2 時の流れは元来この世を支配し、速まる事も遅れを取ることもなかった。 時間は空間と共存し、そこに生きる者の意識を制御する。 それは不可逆的方向を持ちながら、人々に未来を、過去を暗示させる。 哲学者プラトンはこれを永遠の動く影と称し、アリストテレスは運動の帯びる性質と考えた。 人が時間を超える事はできない。 しかしながら、そう思われていたのはつい最近までだ… 哲学は哲学にすぎない。 「あーダメだ」 ヒロは何度も試した。 時間を止める事はできても、移動する事ができない。 「できるような気がするんだけどなぁ」 垂直に平滑な岩肌から身動きが取れぬまま空を眺めていると、何かが物凄い勢いで飛んできた。 刹那ヒロの身体を掴み上げると風を感じた。 親鳥にでも捕まったか。 慌てて時を止めるとヒロを抱き上げる好青年が、ただ前を見て宙に浮かんでいたのだった…。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加