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ヒロ.2
時の流れは元来この世を支配し、速まる事も遅れを取ることもなかった。
時間は空間と共存し、そこに生きる者の意識を制御する。
それは不可逆的方向を持ちながら、人々に未来を、過去を暗示させる。
哲学者プラトンはこれを永遠の動く影と称し、アリストテレスは運動の帯びる性質と考えた。
人が時間を超える事はできない。
しかしながら、そう思われていたのはつい最近までだ…
哲学は哲学にすぎない。
「あーダメだ」
ヒロは何度も試した。
時間を止める事はできても、移動する事ができない。
「できるような気がするんだけどなぁ」
垂直に平滑な岩肌から身動きが取れぬまま空を眺めていると、何かが物凄い勢いで飛んできた。
刹那ヒロの身体を掴み上げると風を感じた。
親鳥にでも捕まったか。
慌てて時を止めるとヒロを抱き上げる好青年が、ただ前を見て宙に浮かんでいたのだった…。
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