第1章

8/12
前へ
/109ページ
次へ
クレア.2 樹海は陰鬱で気味が悪い。常に食欲旺盛で獰猛な獣の唸る声が聞こえた。 「どうなっているんだ」 スーツ姿の男、ネイサンは吐き捨てる。 「あれは何?」 目の前を横切る動物を指差す。 ライオンの様な凶暴性溢れる外見。 「手懐けるのは難しそうだ」 動物はこちらに気付いたのか、急に向きを変えた。 「こっちに来るわ」 不死身と言えど喰われるのはごめんだ。 丸ごと飲み込まれては再生も何もない。 獣が四肢を目まぐるしく動かし突進する。 距離が数歩まで縮まった時、身体が浮いた。 重力は感じたまま身体が…飛んでいる。 彼が飛行していた。 「あなた飛べるの?」 「わからない。でも飛べる気がしたんだ」 空中で会話という所業の後、二人はゆっくりと着地した。 そして今度は獣を掴みそのまま無理な体制で上昇、途中で獣を突き落とした。 「これでどうだ」 「私がこうならなくて良かったわ」 体中の骨が折れたのだろう。獣はぐったりとし、動かなくなった。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加