第1章

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マット.2 頭が爆発しそうになった。声が渦を巻き、ぎしぎしと内側から破壊する、そんな痛みが続いた。 「これは俺の声じゃないぞ」 上着はまだ絞った後なので、マットは上半身が裸の状態だった。 川の上流に誰かいる… 『あいつの仕業か!』 また頭の中に声が入り込み、出て行ったと思えば渦となった。 「うわァ」 マットはあまりの痛みに跪いたが、視界にいる男も同様だった。力を制御しなければ… どうにかして落ち着くと、渦は消え去った。 「君は誰だ」 男が言った。 「俺はマット。今のはお前がやったのか」 「知らない。僕はピーター。ただ…他人と同じ事ができる」 彼はまだ頭を抑えていた。 なるほど。 読心に読心を重ねていた訳か。 二枚の鏡に挟まれた時みたいだ。 鏡は互いに反射し合い、不思議な奥行きが生まれる。 とにかくこいつの前では力を使えないな。
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