■ふりつもる日々をすくう

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ツリーを飾ったことがないと言ったら、作ってくれた。手持ちの紙で。喫茶店の狭いテーブルで。 それから、クリスマスには20余りのプレゼント。 ケーキ。マフラーに手袋。ネクタイ、セーター。スノードーム。絵本。ハンカチ。辞書。ノートにペン。小説。きれいな石。折り紙。靴下。お茶。銀のスプーン。キズ薬。花。 きれいなもの、暖かいもの、便利なもの、おいしいもの、お気に入りなもの。 サンタクロースみたいに荷物をいっぱいにして。 これだけで僕は一年しあわせに囲まれて過ごせそうだ。 端午の節句には、きれいな紙で折ったカブトを頭にのせて、丈夫に育てと言ってくれた。 あやとりを教えてくれた。 動物園にも水族館にも連れていってくれた。 映画も絵も一緒に見てくれた。 髪を切ってくれた。 昔話を教えてくれた。 菊酒を飲んだ。 豆まきもした。 ラジオ体操のスタンプを押してくれた。 僕が持ってないもの埋めてくれた。 忘れられる訳無い。 一年を一巡り満たしてくれて、僕は初めて子供な自分を味わってそしてさよならする。 でも一生には足りない。 さよならするから、もっといつも僕をどきどきさせて。 いまの僕を。 真っ白なツリーは机にしまうから、緑のモミの木を一緒に飾って。 くれたもの全部あたりまえのことにするから、あたりまえに一緒に遊んで。 もっともっと。 行事もイベントもアニバーサリーも。もっといっぱいたくさんあったらよかった。 溢れるほどに。
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