序 章 文明は痕跡を残す

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    「何だァ? これが今裏世界を騒がせてる機密組織かよ」 三つの建物の中でも最も大きな《三棟》の廊下を歩く赤毛の少年。 そこは、所々にガラスの破片が散乱していた。 それは時間の経過による自然現象で、別に少年がここで暴れまわったからではない。 そして、暴れる必要もなかった。 その時。 何の前触れもなく、少年の背後の廊下の奥から、何かが急接近して来た。 それは、全長二メートルほどの巨大な氷の塊だった。 先端は鋭く尖っていて、大樹の幹でも簡単に貫きそうな威力を秘めていた。 それが、少年の背中に突き刺さり、臓物が飛び散る。 何てことは、奇跡でも起きない限りありえなかった。 一瞬のウチに、少年の周囲に、氷河を一瞬で融かすほどの熱風が吹き荒れた。 それは全長二メートルの氷をみるみる縮小し、少年の背中に届く寸前に消えてなくなる。 「チッ。シケてやがるな」 すると少年は、一つの部屋の扉が目に付いた。 ここは、部室のみを収容した場所らしいので、普通の教室ではない。 少年は、その錆びた鉄扉を蹴破る。 扉は脆く、すぐに崩れてしまう。 その中は、部室というより、何かの倉庫のようだった。 倉庫の中身を改装して人が利用していた痕跡が見られた。 奥の方に掛けられた二つのハンモック。 その手前には、何やら見慣れない金属の箱がある。 「科学か・・・」 それは、昔パソコンと呼ばれていた機械だった。 そのパソコンが二台、部屋を区切るように置かれた長テーブルの上に向き合うように置かれていた。 そして一部の壁には何やら絵画のようなモノが飾られていて、それらは全て埃を被っていた。 「・・・この埃の量だと、ここ数十年は放置されているな。いや、もっと前か」 そう。この校舎が閉鎖されたのもここ数年の話ではない。 もっと大昔。 「カビ臭えな・・・」 少年は、その部屋を後にした。
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