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気が付けば、少年の髪色も瞳の色も両方が真っ赤な真紅色に戻っていた。
「オイオイもっと俺を楽しませてくれよ」
それは独り言ではない。
少年の周りには、360度、老若男女問わずの人間が囲っていた。
服装や容姿もそれぞれ違う。
街中にいそうな、何の変哲もない“魔法使い”達。
少年を囲む十人近い魔法使い達は、侵入者の姿を捉えると、そこから容赦をしなかった。
360度からの、斬撃、砲撃、爆撃、打撃、様々な攻撃があった。
それはもちろん人の手によるものではなく、魔法によるもの。
大小様々な衝撃波から、何色もの属性を表す色。
それらが全て、一人の少年へ向けられていた。
この校舎は古びている。
故に砂埃の量が半端ではなかった。
「げほ、げほ。こんなに派手にやる必要あったんですかねー?」
“魔法使い”の一人が、この中の長に言う。
「問題ねえ。俺らの素性が割れちまう前にてっとり早く始末しておいた方が楽だろ」
野太い男の声が、何も見えない砂埃の中から聞こえる。
「死体はちゃんと処分しとけよ。腐ると臭ェからな」
「へいへい」
リーダー格の男が、どこかへ去ろうとしたその時だった。
ビュウワッ!! と突風が地面から上へ向かって吹き荒れた。
その突風に、砂埃は全て払われ、一気に視界が晴れる。
「た、隊長ッ!!」
“魔法使い”の一人が、リーダー格の男に対して、言葉を発した。
「なんだようるさい―――」
男の目には、信じられないモノが映っていた。
一人の少年。
先ほど、無数の致命的な攻撃を真っ向から受けたはずの少年が、“魔法使い”達に取り囲まれた中心で、悠々とポケットに両手を突っ込み、ケタケタと笑っていた。
「つまんねえ。本当につまんねえよお前ら。そんな事してて楽しいワケェ?」
少年の表情は、退屈と快楽が表れていた。
そして、その髪は黄金に輝き、その瞳もそれに沿うように黄金に輝いていた。
「黄色は風の象徴」
少年は、両手を広げ、歌うように唱える。
「面倒臭ェ。目の前にいるゴミ共を一辺に片付けろ」
ヒュゥゥゥォォォオオオオオオッ!! と、旋風が起きる。
旋風は、少年を360度囲っていた“魔法使い”達を一斉に上空5メートルの位置まで舞い上げる。
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