序 章 文明は痕跡を残す

14/30
前へ
/47ページ
次へ
「ギャハハハハハハハハッ!!」 少年は、まるで弄ぶように、旋風を操り、空中で“魔法使い”達をグルグル回転させる。 「クッ!!」 リーダー格の男は、近くに置いてあった小型の拳銃を手に取り、それを少年へ向けた。 パァンッ!! と乾いた銃声が響き、少年の胴を貫くための弾丸を放つ。 「あっあーん?」 少年は、弾丸に気付いた。 それだけで、十分だった。 その弾丸は、少年に当たる数メートルも手前で爆発を起こした。 「お前、面白いモン持ってんじゃねえか」 そう。 この世界に生きる人間が、拳銃を使う事自体異常なのだ。 「これがアイツらの言ってた『必殺対象(ターゲット)』か」 少なからず、科学に関与する組織。 気付けば、少年の容姿はまた変わっていた。 頭の半分が金髪で、もう半分が赤毛に変色し、眼も片目が黄金で片目が真紅になっていた。 「お、お前は・・・ッ!?」 リーダー格の男が、拳銃を手から落とし、唖然とした表情で少年を見る。 「自己紹介がまだだったなァ」 その声と同時に、少年は魔法を切った。 5メートルの位置に浮かされ、高速で回転させられていた“魔法使い”の皆は、地面に強く叩き付けられ、誰しもが気を失っていた。 半分黄金で半分真紅な少年は、リーダー格の男を見据えて言った。 「ムクロだ。よろしく」 ニタッと不気味な笑みが張り付く少年。 彼の名はムクロ。 過去に、少年の前に立ちはだかった者で、良い死に方をした人間は誰一人としていなかった。 「これも任務だァ・・・。仕方ねえよなァ」 ムクロは本当に面白そうに、しかしどこか退屈そうに両手をポケットに戻す。 その髪は、今度は深緑に変色し、その瞳も同じく抹茶色になった。 トンっ、とムクロは地面を軽く足でつつく。 その瞬間、数メートルも離れた位置にいたリーダー格の男が、地面から飛び出た一本の鋭い樹木に串刺しとなる。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加