12人が本棚に入れています
本棚に追加
そして再び舌打ち。
「本当に目障りだ」
美しい空を見ようとしても、その空を塞ぐのが人間だった。
もうこの都会でまともな空を見るのは、真夜中以外不可能ではないか。そう思った。
『~♪』
その時、少年の携帯が着信音を鳴らす。
まあ携帯といっても、『形は無い』のだが。
少年は、ポケットから片手を引き抜き、その掌を上へ向ける。
そると、掌には、テニスボールほどの大きさの光の球が浮かんで現れる。
「何だよ。俺にはプライベートも与えられねえのか」
『仕方ないじゃないですか。貴方がこの道を選んだんですよ?』
確かにそうだ。
少年は、その光の球から放たれる言葉に次々と答える。
声の主は、少年が関わっている、“ヤバい組織”の連中である。
「言っておくが、俺がお前らと付き合ってんのは“暇だから”だ。その気になりゃ、お前だけじゃなく、お前ら全体を壊滅させる事だって出来るんだぜ?」
『分かっていますよ。こちらだって、こちら側で済ませられる些細な事は極力こちらで処理するよう、心がけてますよ』
「・・・っつー事は、それなりに“でっけえ仕事”なんだろうな。もしつまんねえ内容だったら断ち切るぞ」
『「必殺対象(ターゲット)」という闇組織の一部を潰していただきたい』
少年は、その足を進め、そして人目のない路地裏へ入っていく。
「『必殺対象(ターゲット)』・・・? それって確か、危険な魔法を扱って新たな魔法使いを生み出そうって企む奴ら。だったか」
『やはり、ご存じでしたか』
「俺を誰だと思ってやがる。下手したら、お前らより深い部分を知ってると思うがな」
『・・・それでは、仕事の内容をお伝えします』
声の相手は、少年の質問を流し、話を続ける。
少年も別にそんな事に腹を立てる事もなく、路地の壁に背中を預け、ただひたすら流れる声に耳を傾ける。
それはまるで、オルゴールでも聞いているかのように。
最初のコメントを投稿しよう!