序 章 文明は痕跡を残す

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そして再び舌打ち。 「本当に目障りだ」 美しい空を見ようとしても、その空を塞ぐのが人間だった。 もうこの都会でまともな空を見るのは、真夜中以外不可能ではないか。そう思った。 『~♪』 その時、少年の携帯が着信音を鳴らす。 まあ携帯といっても、『形は無い』のだが。 少年は、ポケットから片手を引き抜き、その掌を上へ向ける。 そると、掌には、テニスボールほどの大きさの光の球が浮かんで現れる。 「何だよ。俺にはプライベートも与えられねえのか」 『仕方ないじゃないですか。貴方がこの道を選んだんですよ?』 確かにそうだ。 少年は、その光の球から放たれる言葉に次々と答える。 声の主は、少年が関わっている、“ヤバい組織”の連中である。 「言っておくが、俺がお前らと付き合ってんのは“暇だから”だ。その気になりゃ、お前だけじゃなく、お前ら全体を壊滅させる事だって出来るんだぜ?」 『分かっていますよ。こちらだって、こちら側で済ませられる些細な事は極力こちらで処理するよう、心がけてますよ』 「・・・っつー事は、それなりに“でっけえ仕事”なんだろうな。もしつまんねえ内容だったら断ち切るぞ」 『「必殺対象(ターゲット)」という闇組織の一部を潰していただきたい』 少年は、その足を進め、そして人目のない路地裏へ入っていく。 「『必殺対象(ターゲット)』・・・? それって確か、危険な魔法を扱って新たな魔法使いを生み出そうって企む奴ら。だったか」 『やはり、ご存じでしたか』 「俺を誰だと思ってやがる。下手したら、お前らより深い部分を知ってると思うがな」 『・・・それでは、仕事の内容をお伝えします』 声の相手は、少年の質問を流し、話を続ける。 少年も別にそんな事に腹を立てる事もなく、路地の壁に背中を預け、ただひたすら流れる声に耳を傾ける。 それはまるで、オルゴールでも聞いているかのように。  
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