序 章 文明は痕跡を残す

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仕事の内容はいたってシンプルだった。 とある廃校跡地を基地とする、とある集団を跡が残らないように処分せよ、とのことだった。 その集団は、『必殺対象(ターゲット)』という通り名の闇組織の一部の小組織らしい。 最近、この東京で失踪事件が立て続けに起きている。 その事件も、その小組織の連中の仕業だった。 小学生から大学生までの学生を狙ったモノで、どこかへ連れ去り、何かをしている、という情報のみ言い渡された。 そして仕事の内容を告げると、そのまま一方的に切ってしまう。 「ホント、気に食わねえ奴らだ」 そんな愚痴をこぼす彼も、そんな事を言いながら、目的地である廃校跡地の校門前へ立っていた。 『私立 奥ノ原学園』 古びた校舎の校門には、その学校の名前が書かれていた。 外装を見る限り、相当前に廃校になった学校だろう。 恐らく、内容と世間がブレてきたのだろう。 この世界は、数百年も前までは、法則が全く逆だった。 法則。 『科学』という名の法則がはびこっていた。 しかし今の世界では『魔法』や『魔術』といった、『科学』では全く説明のつかないモノとなっている。 『科学』を取り入れ、それが主体になっていた学校が、法則がガラッと変わった今の世界では、何の意味も成さない。 つまり、廃れる。 そんな学校は、今では珍しくはなかった。 『科学』がほとんど終わりを遂げた今では、『魔法』を専門とした学校が増え、『科学』を習うはずだった学校は、今では潰れてしまう。 「価値観の相違が生む新生と死滅か・・・」 独り言を呟き、そして舌打ちをする。 彼は、最近自分でも舌打ちが癖になっていることを自覚する。 それも仕方ない。 何せ、退屈で退屈で、そしてくだらない事だらけなのだから。
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