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舞夢は、真っ白な髪を揺らしながら、人差し指を口元に当てて、無駄に胸を強調する体勢をとる。
「私は『氷』を主に扱う魔女。狩野 舞夢だよ。よろしく」
その名前を聞いた途端、大柄の少年は目を見開いた。
狩野 舞夢。
その名を口にした瞬間、教室が静寂に戻り、その場にいた全員の視線が舞夢に集中した。
大柄の少年は、その手から病弱そうな少年を放してしまう。
ドサッと床に落ちる細い少年。
『氷』を主流とする魔女。
狩野 舞夢。
真っ白な白髪に、計10個以上の『アクセ』。それでも有り余る魔力。
そして、振り撒かれる不気味な笑顔。
この教室の全員が、舞夢の存在を知っていた。
少なくとも、名前だけは。
それは、一応のクラスメイトだからというワケではない。
皆が、ここに来る前から彼女の存在を知っていた。
『東京には、近づいてはいけない魔法使い達が数名存在する』
という噂話があった。
ちまたでは『危険人物(デンジャー)』などと呼ばれていた。
その中に、狩野 舞夢の名前があった。
そして、彼女が『アクセ』を全て外せば、この世界に氷河期が訪れるとまで言われていた。
「あっれー? さっきまでの威勢はどうしたのぉ?」舞夢はさらにからかうように言う。
「う、うるせえ!!」
大柄の少年は、教室から飛び出てしまった。
「んー?」
舞夢は、不意に病弱そうな少年へ目を向けた。
「ひ、ひぃッ」
顔を真っ青にして、腰を抜かしていた。
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