第 六 話

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「何を作ってくださるんですか?」 買い物カートを押しながら問われ、食材から彼に視線を移して思わず笑ってしまった。 スーツを着たイケメンがスーパーで買い物カートを押している姿は、はっきり言ってミスマッチである。 「何が可笑しいのですか?」 怪訝な表情の彼にますます笑いが込み上げる。 「総一さんがあまりにも浮いているので…」 笑いを堪えながら話す私を、彼は少し不機嫌そうに睨んだ。 「楽しそうで何よりです」 その不機嫌な声に堪えていた笑いが吹き出した。 「貴女とは二度とスーパーに来たくありません」 おもいっきり不機嫌そうにそう言うから、目尻に涙が溜まるほど笑ってしまった。 「笑い過ぎですよ」 そう言った彼も可笑しそうに笑っていた。 「総一さんは何が食べたいですか?」 笑いが漸く治まり買い物を再開させるべく質問すると、彼からは何とも微妙な答えが返ってきた。 「私は食べられる物なら何でも良いですよ」 …『何でも良い』はよく聞くが、『食べられる物なら』ってわざわざ付けたのは、私の料理の腕を疑っているからか?  
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