第 六 話

17/18
前へ
/457ページ
次へ
「では、今夜は納豆料理にしましょうか」 笑顔で告げると、彼は顔を引き攣らせた。 「…それは嫌がらせですか?」 「まさかっ!」 芝居がかった言い方をすると、彼は顔をしかめた。 「嫌がらせなんですね」 「私の作った料理を召し上がれば、きっと納豆が好きになれますよ」 「苦手なままで構わないので、その心遣いは結構です」 「好き嫌いすると大きくなれませんよ」 「これ以上の成長は必要としていません」 「…総一さんは人としての成長は必要かと…」 ボソッと呟いたのだが、ちゃんと聞こえていたようで冷ややかな睨みが返ってきた。 「…それはどういう意味でしょうか?」 「さて、晩御飯は何にしようかな…」 食品棚へと視線を移し、惚けてみると隣から小さな溜め息が聞こえた。 「夕食は日本酒に合う料理をお願いします」 「日本酒、ですか?」 思わぬリクエストに聞き返せば、肯定の頷きが返ってきた。 「日本酒なら和食でしょうか?」 「居酒屋メニューがいいですね」 …居酒屋、メニュー…?  
/457ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7277人が本棚に入れています
本棚に追加