第 七 話

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「ちゃんと髪を乾かさないと風邪を引きますよ」 「私が風邪を引いたら、看病してくださいますか?」 「移るから嫌です」 冗談めかして言うと、彼も笑った。 「今日は優しい妻を演じるのではなかったのですか?」 「そうでした。 勿論看病してあげますよ。 但し、優しい妻は本日限りなので、風邪を引くなら今しかないですよ」 飛び切りの笑顔付きで訂正すると、彼は苦笑いした。 「髪を乾かしてきます」 彼を見送り、出来た料理をダイニングテーブルへと運んでいく。 料理を全て並べ終える頃、タイミング良く彼が戻ってきた。 「美味しそうですね」 「お口に合えばいいですけど…」 「優姫さんも日本酒を召し上がりますか?」 「日本酒は飲んだ事が無いので…」 「では、飲みやすい物を持ってきますね」 そう言うと、キッチンにある棚から徳利とお酒を取り出し、晩酌の用意を始めた。 全ての用意が整い、向かい合わせでテーブルに着くと、彼との初めての食事が始まった。  
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