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「どうぞ」
徳利を差し出され、反射的に猪口を出すと、小さな猪口に日本酒が注がれ、それをテーブルに置いてから彼に向けて徳利を差し出した。
「ありがとうございます。
総一さんもどうぞ」
「頂きます」
優しく微笑む彼に促されるように、再び猪口を持つと初めての日本酒を口にした。
「如何ですか?」
「…日本酒は匂い同様、味もやはり独特ですね。
でも、想像していたよりも飲みやすくて美味しいです」
「口に合って良かったです」
微笑みながら安堵したように呟き、彼は料理に箸をのばした。
蓮根のきんぴらを口に運ぶ彼を、緊張しながら思わず凝視してしまう。
「……如何ですか?」
緊張気味の声で問えば、彼は優しく笑った。
「とても美味しいですよ」
その一言で体から力が抜けた。
「優姫さんは料理がお上手なんですね」
「意外ですか?」
「意外でした」
姿勢正しく、綺麗な箸使いで焼き魚を解しながら彼は穏やかに笑った。
「貴女の様なお嬢様は初めてです」
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