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「私がですか?」
聞き返され、頷き返せば、彼は解せないようで僅かに顔をしかめた。
「普通は初対面のお見合いで結婚を申し込めば、了承されるより断られる確率の方が高いと考えると思いますが、総一さんは断られるとは全く想定していなかったとおっしゃったので、余程御自身に自信があるのかと…」
「成る程、それでナルシストですか」
難解な謎が解けたかのように彼は小さく一度頷いた。
「優姫さんから見れば、私は確かにナルシストですね。
そして、私は私が嫌悪する方々と同じですね」
苦笑いのような嘲笑する笑みを浮かべた彼に、また余計な事を言ってしまったと小さな後悔が湧く。
「確かに私は貴女が結婚を断るとは微塵も思っていませんでした。
華我御財閥御曹司の肩書きがある限り、相手は大喜びで了承すると思っていましたから」
…華我御財閥御曹司の肩書き…
即ち財閥の全てをいずれ手に入れる者。
皆が欲する者。
……この人は自分に自身があるわけじゃないんだ…
「ですから無愛想で現れ、婚姻を断固と拒否した貴女には酷く驚かされましたし、その後の貴女にも驚かされてばかりです」
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