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「……脅してまで貴方が私と結婚したい理由を教えて下さい」
好意からではない事は分かっているし、華我御財閥から見れば、父の会社など大した企業ではない。
何故脅してまで私と結婚したいのか、理由が分からない。
「華我御を継ぐ為です」
彼は婚姻届に視線を移し、そう呟いた。
「…華我御の直系は私だけです。
ですが、直系だからという理由だけで私が継げる物ではなく、私は後継者になる為だけを考えて今まで生きてきました」
彼の視線が私へと戻ってきた。
「先日父から条件をのめば会社を私に譲ると言われました」
「条件…?」
「父が出した条件、それが貴女との結婚です。
私は父が守ってきた会社を他人に譲る気はありません。
貴女との結婚が後継者の条件ならばのむだけです」
真っ直ぐ私を見つめるその顔は、最早見慣れたと言っていい無表情。
…この人は父に似ているのかもしれない。
【会社の為】なら自身を犠牲にするし、他人も犠牲に出来る。
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