第 一 話

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私が断れば、彼は父の会社を潰す。 きっとそれは冗談なんかじゃない。 父と同じで彼もまた【会社の為】なら、何でもする。 野心ある男はそういうものだと、嫌というほど知っている。 ……沢山の人の人生と私一人の人生…… 天秤にかけた時、どちらに傾くかなど決まっている。 結婚は愛する人としたかった。 愛のある家庭を築きたかった。 母のような道は歩きたくなかった。 貴方は、私を、 愛してくれますか? 愚問、よね… 【会社の為】に【結婚】すると言う彼は、【私】になど興味はない。 彼にとって大事なのは【会社】だけ。 無言のまま婚姻届とボールペンを引き寄せ、空欄を埋めていく。 最後の一文字を書き終えた時、私の頬を涙が伝った。 静かに目を閉じ、小さく深呼吸してから再び瞼を上げ、目の前に座る彼を見据えた。 「…愛する人と、愛のある結婚をするのが私の夢でした」 私の言葉を聞いても、彼は無表情のままだった。  
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