第 二 話

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「本日はお忙しい中貴重なお時間を頂いた事を感謝致します」 恭(ウヤウヤ)しく頭を下げたた彼を見て、父は笑顔を見せた。 「総一君、そう畏まらないでくれ。 それで今日は何かな? 昨日の見合いで娘が君に何か失礼でもしたのかい?」 父がそう問うと、彼は下げていた顔を漸(ヨウヤ)く上げ、そこにあった顔に私は唖然となった。 ……どちら様? 昨日は終始無表情だった顔が、私の隣で惚れ惚れするような微笑みを湛(タタ)えていた。 「今日はお嬢さんとの結婚を承諾して頂きたく参りました」 真摯な態度でそう申し出た彼に、前に座る両親は驚きの表情を見せた。 両親が驚くのは当然。 お見合いをしたのは昨日で、彼は『結婚を前提にお付き合い』をすっ飛ばし、いきなり『結婚の承諾』を得に来たのだから、これで驚かなかったらこっちが驚く。 「今、結婚の承諾と言わなかったか?」 俄(ニワカ)には信じがたい台詞に父が問い返せば、彼は間を空けずに頷き返した。 「優姫さんとの結婚を認めて下さい」 再び頭を下げた彼に、両親は互いに顔を見合わせ、真意を問うように私を見た。  
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