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誓約書か何かだと思っていた紙は婚姻届だった。
ある意味誓約書ではあるが、今の状況には全く相応しくない誓約書である。
いや、ある意味もっとも相応しい誓約書であるのかもしれない。
が、私に言わせればやはり相応しくない誓約書である。
「婚姻届ですからそう見えるのは当然かと思いますが、何か問題でもありましたか?」
この時、無表情が初めて違う表情へと変わったのだが、無表情の変わりに現れたのは怪訝な表情であった。
…何でそんな顔?
私が可笑しいの?
「…問題だらけかと思いますが…?」
目の前の婚姻届には神経質そうな印象を与える程綺麗な字で彼の名前が書かれていた。
それは証人の欄ではなく、夫になる人物が書かなくてはならない欄に書かれており、捺印まで押してあった。
「全て正確に記入した筈ですが…」
怪訝な表情のまま婚姻届を自身に引き寄せ、確認していく。
「間違いは何処にもありません。
貴女の勘違いですね」
怪訝な表情は元の無表情へと戻り、婚姻届が再び私の目の前に戻ってきた。
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