第 一 話

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「……確認の為に一応お聞きしたいのですが、私は何処にサインをすればいいのですか?」 初対面の人の婚姻届に私がサインする箇所など何処にも無いが、彼は私のサインが欲しいと言うのだから取り敢えず聞いてみない事には。 予想出来る答えはあるが、この予想は当たって欲しくない。 「私の名前の隣に貴女の名前を書いて下さい」 予想は見事的中したが、全く喜べない。 ……貴方の名前の隣は、妻になる人が書くべき欄ですけど…? 「……私達、会ってまだ二十分も経っていませんが…?」 「そうですね、しかし時間は関係ありません。 記入をお願いします」 続く無表情に噛み合わない会話。 回りくどい言い方をするのがいけないのかと思い核心に迫る事にした。 「私と結婚するつもりですか?」 その問い掛けに、彼は一瞬も無表情を崩さなかった。 「そうです。 貴女には私と結婚して頂きます」 後から思えば、これがプロポーズの言葉だったのかもしれない。  
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