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「…どうしたら貴女に近付けるんでしょうね」
ゆっくりと歩き出した彼が独り言のように呟く。
「交換日記で少しずつ貴女の事を知り、最近では貴女と少しはコミュニケーションが取れているような気がしていました」
見上げた顔は何処か寂しげで、胸の辺りに小さな痛みを感じた。
「…それは私も感じていました。
夫婦とは呼べないですけど、知り合い程度にはなれたような気がしていました」
小さく返した言葉に彼は眼を細め、少しだけ嬉しそうな和らいだ表情を浮かべた。
「私は急ぎ過ぎたのかもしれませんね。
今まで通りのペースを守っていけば、貴女と友人になれそうな気がしてきました」
「…私と友人になりたいのですか?」
私の問い掛けに彼は考え込むように暫く無言になった。
「最終的に貴女とどのような関係になりたいのかはわかりませんが、他人から知り合いになれたのなら、次は友人になれそうな気がしたんです」
「…総一さんと私が友人…何だか変な気がしますね」
友人と呼べる程仲の良い私達を想像して、有り得ないような関係に思わず小さく笑ってしまった。
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