第 六 話

5/18
7268人が本棚に入れています
本棚に追加
/457ページ
「…どうしたら貴女に近付けるんでしょうね」 ゆっくりと歩き出した彼が独り言のように呟く。 「交換日記で少しずつ貴女の事を知り、最近では貴女と少しはコミュニケーションが取れているような気がしていました」 見上げた顔は何処か寂しげで、胸の辺りに小さな痛みを感じた。 「…それは私も感じていました。 夫婦とは呼べないですけど、知り合い程度にはなれたような気がしていました」 小さく返した言葉に彼は眼を細め、少しだけ嬉しそうな和らいだ表情を浮かべた。 「私は急ぎ過ぎたのかもしれませんね。 今まで通りのペースを守っていけば、貴女と友人になれそうな気がしてきました」 「…私と友人になりたいのですか?」 私の問い掛けに彼は考え込むように暫く無言になった。 「最終的に貴女とどのような関係になりたいのかはわかりませんが、他人から知り合いになれたのなら、次は友人になれそうな気がしたんです」 「…総一さんと私が友人…何だか変な気がしますね」 友人と呼べる程仲の良い私達を想像して、有り得ないような関係に思わず小さく笑ってしまった。  
/457ページ

最初のコメントを投稿しよう!