第 六 話

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食材の買い物をしようとスーパーに寄ってもらうと、車から降りた彼がスーパーを眺めながら信じられない言葉を口にした。 「こういう店で買い物をするのは初めてなので、少しワクワクしますね」 「初めて、なんですか?」 驚きながら聞き返すと、苦笑いのような表情と肯定の頷きが返ってきた。 「今まで食品を買いに行く事が無かったので…」 …食品を買った事が無いって、今までどうやって生きてきたの? 「今まで食事はどうしていたんですか?」 「食べないか外食ですね」 苦笑いされたが、私は苦笑いさえ浮かばない。 「そんな不健康な食生活を続けていたら、死んじゃいますよ」 「死ぬのは嫌なので、病気で止めて頂けませんか?」 「病気になって死んじゃいますよ」 「死んでしまうのは困りますね」 …なんだ、この会話は… 会話をしながら、段々と自分が総一さんワールドに染まっていっているような気がした。 …総一さんとの微妙にテンポの合わない、噛み合わない会話に慣れてきてる?  
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