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それでも俺は友達を信じたいのだと幸福が再認させる。
自分を救ってくれた絆の優しさが、自分を戒める感情の鎖を緩く解いていく。
それはとても心地よくて、空恐ろしくなる程に底なしになる。
逃げられない。逃れられない。
火の様な熱さではなく、日のような暖かさでもなく。
掌の持つお互いの熱を受け交わす熱が作る火照り。
足りないのなら受け渡し、多いのなら受け渡し、満ちているならお互いを包む。
貪りたくなる様な優しさ。
友達との絆というのは断ち切ってしまいたくなる程に優しくて、心を満たしてやまない。
だから俺は覚悟した。
このまま甘んじるばかりではいけないと。
誰かから受け取る優しさで誤魔化す訳にはいかないのだと。
友達に対して俺は真摯に向き合ってきたつもりだし、その関係を良好にするための努力もしてきた。
だけど俺は怖くて一つだけ手を付けてない絆がある。
それを改善する為に動こうと思う。
もしもそれでその絆が崩れたら俺はどうなるか分からないけど。
それくらいに大事な彼女の為に。
俺は覚悟を決める事にしたのだ。
今度の大会で俺は全力を出す。
全力とはいっても非致死に抑える程度ではあるけれど、それでも羅雪達の経験を活かせば学生程度なら問題ないだろう。
驕りかもしれないが、おそらくは事実だ。
月の力を、羅雪の力を、アッシュの力を、セツィの力を借りて俺は戦うだろう。
それが落ちこぼれのルイスヴェルトとしての俺との決別であり、彼女へのせめてもの感謝の証となるのだから。
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