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「マジか」越坂部は唾を飲み込んでテレビの画面に目を向ける。歳はとっても男なのだ。
三人はテレビの前に顔を並べてその瞬間を待った。ミサキの足が微かに動く。
「くるか?」まことが呟く。
「あと少しっす」龍二が囁く。
越坂部は唾を飲み込んだ。やはり男なのだ。
ミサキの左足に組んだ右足の膝が浮いた。三人が組み替えると思った瞬間だった画面はパドック中継に変わった。
「大事なところで何やってるんだ、テレビ局の野郎!」龍二は怒鳴った。
「ふんぬーっ」まことは言葉にならない怒りだ。
一番怒ったのは越坂部だった。テレビに近づくとテレビを持ち上げ、
「ぶっ壊してやろうかコラ!」と叫んだ後テレビを揺すった。
「何やってるの?」とさくらが言う。
三人はテレビ画面に見入っていてさくらが会議室に現われたことに気付いていないようだ。
「ミサキちゃんのパン…」龍二はそれに答えるように言いながら声のしたほうに目を向け、さくらに気付いて顔を赤くした。
まこともさくらに気付くと肩をすぼめて苦笑いしながら頭を掻いた。
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