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テーブルに残るモサモサとした毛……いわゆる鬘と、フレームが少し大きめに作られた銀縁メガネ。 やっぱり、社長の考えてることわかんねー……。 いいやもう、放置だ放置。 どう考えても必要ないこのセットに疑問を感じながら、俺は再び社長室に戻った。 「あら、似合うじゃない」 「どうも……」 にっこりと笑う社長に嫌な予感を感じながらも、とりあえずお礼を言う。 そして、その嫌な予感が的中したのだった。 「じゃぁまずは……ワイシャツのボタン、ちゃんと上まで閉めなさい。ズボンはもっと上に上げる! ネクタイも緩めない! ところで眼鏡は? 鬘は? ちゃんと渡したでしょ?」 「……へ?」 「鬘あったでしょ? あと眼鏡。銀縁のダッサいの」 ダサい、の部分を強調して言う社長。 この際、今のマシンガントークのような指示にはつっこまないでおこう。 で、あなたはその“ダッサい”眼鏡をかけろとおっしゃるんですかー!? 「えーと……あれ必要です?」 テーブルに放置してきたセットを頭に浮かべ、疑問に思っていたことを口にすると。 「当たり前じゃない。変装にはつき物でしょ? あんたには今から“ガリ勉風オタク”を目指してもらうんだから」 「はい?」 「だーかーら! 変装よ、変装! それ以外何があるの」 「……俺が変装しなきゃいけない理由は?」 「こっちの手違いで、普通校の理事長に話つけちゃったの。生徒にバレたら大変でしょ? ま、なんとかなるわよ。よろしくね」 ……ちょっと待てーっ!!
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