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とりあえず、社長に渡された鬘と眼鏡の着用は全力でお断りし、変装は愛用していた黒縁のダテ眼鏡で許してもらうことになった。
でも、ワックスで遊ばせていた髪はしっかりと元に戻され、以後ワックス使用禁止令が発令。
……もともと癖毛に悩まされていた俺にワックス使用禁止令だなんて、いじめだとしか思えない。
で、そろそろ切ろうかと思っていた前髪は前に垂らして、なるべく顔を隠すことに。
さらに、指摘された着崩した制服を直されて……
「あ……三崎遥です。よろしく……」
1週間後の今日、私立博南高校に編入してきたのである。
クラスメートの俺に対する態度とくれば、そりゃあもう散々だった。
隣に座る柊千佳は、授業では不真面目ながらも成績は常に優秀。
それに加えて容姿端麗で性格も明るい……要するに、クラスのアイドル的存在らしいのだ。
そんな彼女に「はるちゃん」なんて呼ばれた転校生の俺が、男子の視線を痛いくらい浴びるのは当たり前のことだろう。
ただ1人、前の席に座る進藤裕太を除いては。
─*─
「じゃぁ、ちゃんと友達できたんだ。良かったね」
楽屋に戻ってきた俺は、一磨の言葉に返事もせず、そのままソファーに倒れ込んだ。
ニコニコ笑う一磨はといえば、用意されたお菓子に手を伸ばし、何から食べようか吟味している様子。
って言うか……
「いい加減その喋り方やめろ。もう誰もいないだろ」
「このキャラ面倒くせぇ……つか普通こんな奴に好き好んで関わるかよ」
「じゃぁやめろよ……」
これが、一磨の本性だ。
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