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そう、1歩だけ。
1歩足を踏み入れた所で事件はおこった。
「……ひ、ろ」
注文カウンターの方へとずんずん足を進めていく進藤の存在を忘れ、その場に突っ立ったまま、思わず口に出してしまった独り言。
それは、俺の心中と目に映る光景を表現するには十分すぎる2文字だと思う。
「あれー、三崎?」
「……」
よし、とりあえず落ち着け、俺。
計算してみよう、まずは。
1クラス40人が1学年5クラスで、200人。
それが3学年で600人……。
ああ、そうだ。
教師もいるじゃないか。
大体50人くらいか?
で、合わせて650人……。
「……三崎?」
食堂の入口。
結構邪魔になる場所だったせいもあり、いろんな人と何回も肩がぶつかった。
でも、それが気にならないくらいに……俺は放心していた。
「なんなんだ、これは……」
大きな窓ガラスの向こうから射し込む光が白いテーブルに反射して、キラキラと輝いているように見える食堂内。
ぐるりと見渡せば、生徒が並ぶ注文カウンターは、進藤が向かっていた場所を含めて3ヶ所。
ついでに、その側に隣接する厨房も3ヶ所だ。
等間隔で並ぶテーブルは、もう数えるのが億劫になるほどの数で。
……どこぞの高校の体育館、いや、“グラウンド”並みに広い食堂は、俺の中の食堂イメージを大きくぶち壊してくれた。
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