4410人が本棚に入れています
本棚に追加
母親だ……。
口うるさい母親がいる……。
初対面でまだ一言も喋っていないはずなのに、斜め前に座る相手の第一印象はばっちり決まってしまった。
彼女と一緒だと柊がおてんばな小学生に見えてくるのは、多分俺だけじゃないと思う。
「まぁまぁ、環が世話焼きの母さんキャラってことはわかったから。つか、三崎がひいてるから」
そう言って慣れたように2人の間に入る進藤でも、
「裕太も食べるか話すかどちらかにしなさい」
「……すいませーん」
やっぱりかなわないらしい。
ぶつぶつ言いながらふりかけのかかった白米を口に運ぶ柊と、こちらもやはりぶつぶつ言いながらハンバーグを口いっぱいに頬張る進藤。
まさに、厳しい母親とやんちゃ盛りの小学生兄弟の図だ。
同じ制服を着ながらすっかり保護者の風格を漂わせた彼女は、何も言えずに3人の様子をうかがうだけの俺を見て、上品に微笑んだ。
「進藤環(しんどう たまき)です。よろしく」
「あ、三崎遥です……」
さっきまでガミガミ怒っていたとは思えないほど、凛とした優しい声。
そのギャップに戸惑い、編入2日目の自己紹介も、昨日同様そっけないものになってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!