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母親だ……。 口うるさい母親がいる……。 初対面でまだ一言も喋っていないはずなのに、斜め前に座る相手の第一印象はばっちり決まってしまった。 彼女と一緒だと柊がおてんばな小学生に見えてくるのは、多分俺だけじゃないと思う。 「まぁまぁ、環が世話焼きの母さんキャラってことはわかったから。つか、三崎がひいてるから」 そう言って慣れたように2人の間に入る進藤でも、 「裕太も食べるか話すかどちらかにしなさい」 「……すいませーん」 やっぱりかなわないらしい。 ぶつぶつ言いながらふりかけのかかった白米を口に運ぶ柊と、こちらもやはりぶつぶつ言いながらハンバーグを口いっぱいに頬張る進藤。 まさに、厳しい母親とやんちゃ盛りの小学生兄弟の図だ。 同じ制服を着ながらすっかり保護者の風格を漂わせた彼女は、何も言えずに3人の様子をうかがうだけの俺を見て、上品に微笑んだ。 「進藤環(しんどう たまき)です。よろしく」 「あ、三崎遥です……」 さっきまでガミガミ怒っていたとは思えないほど、凛とした優しい声。 そのギャップに戸惑い、編入2日目の自己紹介も、昨日同様そっけないものになってしまった。
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