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そんな空気を動かしたのは、教壇に立つ先生だった。
「くぉぉぉらぁぁあ! 柊(ひいらぎ)!! お前は何回言ったら真面目に授業受ける気になるんだ!! 毎日毎日居眠りしやがって……」
「へ? あ、すいませーん。次から起きてます、多分」
「多分じゃねー! 起きろ!」
……見た目はやる気なさそうなのに、意外と熱血教師なんだな、あいつ。
妙に感心してもう一度隣の席に目を向ければ、柊と呼ばれた女の子が横結びしたゆるふわウェーブの髪を揺らしながら口を開いた。
「あ、噂の転校生さん?かぁ。私、柊千佳(ひいらぎ ちか)。よろしく」
「よ、よろしく……」
彼女の笑顔が寝起きとは思えないくらいまぶしくて、俺は思わず目をそらした。
……って、いやいやいやいや!
せっかく友達第1号ができる大チャンスなのに、なんで目ぇそらしてんだよ、俺!!
「あああ、えっと、俺は……」
「俺っ、進藤裕太(しんどう ゆうた)。よろしくなっ!」
「あ、うん。よろしく」
「はいっ、そこー。自己紹介は後にしろ! 授業始めるぞー」
おそらく寝てて聞いてなかったであろう柊に自己紹介しようとすると、俺の前の席に座ってた茶短髪のスポーツマン系(あくまで俺のイメージだけど)男子がいきなり乱入してきて。
結局、名前を伝えることはできなかった。
でもなんか……気になる。
隣に座る柊をチラッと盗み見れば、教科書を読んでいるふりをしながら、コクコクと頭が揺れているのが見て取れた。
──「はるちゃん?」
昔、そう呼ばれてた。
1人の友達に……
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