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「それで、高校どうだった? 早く聞きたいな」 一磨が爽やかな笑みを1ミリたりとも崩さずに俺を急かす。 ある意味怖いんだよな、これ。 無言の圧力みたいで……。 俺は着替えるため楽屋へと向かいながら、これまでの出来事を一磨に話し始めた。 ─*─ 1週間前。 すべてはここから始まった。 「へ? 転校?」 「そうよ。今の学校じゃ事務所にもスタジオにも遠いし、通うの大変でしょ? これから忙しくなるし、少しでも近い方がいいと思うのよ。私にもちょっとコネがあってね」 久しぶりのオフの日。 突然事務所に呼び出されたと思ったら、社長室に連れて行かれて。 俺が事情を飲み込むよりも先に、うちの女社長は制服やらなんやらを押し付けてきた。 「はいっ、着替えてー!」 「今!?」 「聞こえなかったの?」 「……着替えてきます」 意味もわからないまま、とりあえず着替えるため社長室を出る。 隣り合った休憩室は、俺達の着替え部屋も兼ねていた。 「なんなんだ……いきなり」 休憩室のドアを閉めた瞬間、思わず口にした本音。 社長がやることは、とにかく俺が想像できる域を越えている。 スカウトされた時なんて、誘拐まがいに車に乗せられたかと思えば、数分後にはスタジオに連れて行かれたし。 まぁ、あの時に比べれば今回はマシかもしれないけど。 ふと、腕に抱えた制服に目を向けてみれば、この辺でよく見かける学生が着ているブレザーだということに気がついた。 どうやら、俺はこれを着て近くの学校に通うことになったらしい。 なんとか自分を納得させて、制服に袖を通し…… 「……毛? 眼鏡?」
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