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「いったぁ!」
あまりにも友人のけらけら笑いが煩わしくなり、腹に一発拳をお見舞いしてやった。
もう一発ほどいきたかったが、これ以上は自分のイメージ(知的で頼りになる優しい人)に影響が出るのが怖いので止めておいた。
友人は顔から笑みを消し、真面目な顔でこう聞いてきた。
「…恋でもした?」、と。
友人の言葉に反応はしたものの、最悪的な反応しか返せず、友人は訝しげな目を向けた。
長年、恋というものから遠ざかっていた人生で、一目ぼれなど絶対にあり得ないと思っていた。
*
「まっすーいじめないでくんない」
「いてぇ!」
「まっすーをいじめたバツ!」
頬を思い切りつねりあげた目の前の可愛らしい男は、増田の友人である手越という名前だったはず。
というより、頬をつねられているその理由に納得がいかないのはどうしてだろう。
「悪かったって」
「うわ!思ってなさそー」
「思ってる」
「えー」
「お前らは何なんだよ!」
「何って、君の友人様とその友人じゃないか」
どうにもこうにも、この二人とは折り合いが合わない気がしてならない。
というより、彼らから折り合いやら何やらを合わせようという気が全く無いようにしか見えないのだが。
「…で」
「は」
「遅れた理由」
妥当な理由を言ってみろと言わんばかりの増田と手越の視線に、出てきた言葉はすぐにばれるような嘘だった。
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