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「……街中で歩いてて、倒れてるおばあちゃんを」
「そんな理由聞いてない」
「はーやーく」
「言わなきゃ帰さないよ」
増田の一言に、そう言えば今日はさっきの授業で終わりだったなぁと思った。
帰りにカフェでも寄って寛ごうと思っていた気持ちは、何処へやら。
「…寝坊、です」
「……ふぅん」
完全に疑いにかかっている2人の視線に、“彼”のことは言えなかった。
ここに来るまでの“彼”とのやりとりなんて言ってしまえば、更に帰れなくなる。
だが、言わなければ一生帰してもらえなくなる気がして、次の瞬間には口が動いていた。
何が嫌で今朝の出会いをこいつらに話さなければならないのか、考えただけでも苛々が止まらない。
また皺が増えるなぁとか思ってるだけで、歳を取ったと感じる今日この頃。
*
「ちょっと出会い頭に人と衝突してた」
「…は」
あれだけ所望した説明をしてやったにも関わらず、目の前の2人は納得がいっていないのか非難の声をあげた。
非難したいのはこちらの方だが。
「もうちょい詳しく!」
「…は」
「それだけじゃ納得がいかない」
「うん」
「それ以外説明のしようがないんだが」
説明した側が何故、溜め息を吐かれなくてはならないのだろう。
お前たちは一体何が知りたいってんだ。
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