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「どんな子だったの」
「言わなきゃダメな訳」
当たり前じゃんと言いながら気持ち悪いぐらいに笑みを浮かべた、目の前の小悪魔2人。
似たもの同士は仲良くならないと聞くが、この2人はどうやら例外らしい。
似た者同士というより、もはや双子に近い。
「俺より若そうな男、だったかな。茶色よりも金に近い色をした髪の色してて、長さは肩ぐらい」
「…で」
「いや、終わりだけど」
増田は溜め息を吐き、手越は舌打ちをした。
いや、そのどちらもこっちがしたい方だよ。
なんて言ったら後がどうなるかが怖いので、出そうになった言葉は飲み込んでおいた。
とりあえずこれ以上の切見えは必要ないらしく、ひとまずこの件は一件落着。
*
「…で」
「お前はすーぐ、でって言う」
「だって気になるじゃん」
「何が」
「どんな出会いをしたのか」
「お前もだろ」
久しぶりに登校なるものをしてきた友人が突然、学食のカレーを食べている時に質問をぶつけてきた。
何故か増田(手越は研究室へ行った)の方が話の続きが気になるらしく、隣でずっとそわそわしていた。
そのそわそわ具合が若干ムカついた。
「増田、落ち着け」
「つーづーきーは」
「耳元で叫ぶなよ」
「早く!気になる!」
「なにが」
「話の続きが!」
「はぁ…」
増田とのやりとりにはいつも、どこか懐かしさを感じていた。
そこに、今目の前で微笑ましい目で自分と増田のやり取りを見ている赤西もいたような気がした。
この時は気のせいだろうと片づけたけど。
「…なんかなぁ、会ったことあるような、ないような感じだった」
カレーを食べている手を止め、そう言うと増田が「そんなんでわかるかー!」と耳元で叫んだので、腹に一発ほど拳と言う名の愛を入れた。
愛が鳩尾に入ったのか苦しそうなうめき声を上げ、増田はノックアウト。
彼との出会いは運命などという言葉ではなく、きっと。
「…変な絆みたいなものを感じたんだよ」
そう言うと赤西は、何かを納得したような表情を見せた。
赤西も、遠い海を越えた先で運命とは言い難い出会いをしたと聞いた。
その出会いはもしかすると、たった一言で片づけられるのかもしれない。
「つまりは…“恋”ってやつでしょ?」とかいう増田の言葉に一瞬納得するのを躊躇ったが、きっとそういうことになるのだろう。
彼とはまた出会う気がしてならなかった。
→End.
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