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「疲れた…」
増田が帰り、中丸は学食内の机に突っ伏した。
やっと中丸と面と向かって話が出来る機会が訪れたのに、この状況はあまりにも…じゃね?
「なーかーまーる」
「…なに」
うわぁ、機嫌悪。
…じゃなくて。
「どんな子、だった」
「…は」
「街で会ったって子」
「あぁ」
どう言おうか迷っているのか、中丸はうーんと唸り始めた。
唸りに唸り、やっとどう言おうか決まったらしく、ぱっと下げていた顔を上げた。
「俺より若そうな男、だったかな。茶色よりも金に近い色をした髪の毛で、長さは肩ぐらい」
一旦話が途切れたからそれで終わりかと聞くと、少し荒くなった声で「そうだよ」と答えた。
「お前の方は」
「え。…あぁ。えと…、一目見れば少年のようにも女にも見えて、背丈は自分とあまり変わんなかった。
服装的にも自分とたいして変わらない年齢だと思う。
んで、俺より少し短い茶色い髪の毛と透き通るような茶色い目してた」
「…一瞬でそんだけ覚えたわけ?」
「な!人を変態みたいに言うなよ」
「変態じゃなかったっけ?」なんて、にやにや笑う中丸に一発でこぴんを食らわせておいた。
まぁ、一瞬でこれだけ特徴を掴めるのは変態かもしれないけれど、それほどまでに惹かれる何かを彼は持っていた。
「…また、会えるかな」
ふと溢した言葉に、一番驚いたのは自分自身。
これほどまでに会いたいと思える人物は、今まで一人も居なかった。
そんな人物が今では二人もいる始末。
“彼”と、先ほど増田に紹介された“山下”という男。
二人の印象は間逆だけれど、どこか似たようなものを持っている気がした。
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