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「会えるだろ。…会いたいと思ってりゃ」
「…深いねぇ」
中丸のコトバは時にとても深い。
深いというか臭い時もあるけれど、心の奥底にすとんと落ちる。
その時の中丸は誰がなんと言おうとかっこいい。
かっ……うん、まぁ…かっこいい。
*
「うし、帰るか」
今日の講義にでる心の余裕はなく、帰宅決定。
忙しなく行き交う人の波を逆走するのは、難しい。
時々他人の肩にぶつかったりなんかして、白い目で見られたりもする。
そんな時、不意に思う。
こっちの空気は本当に生きにくい。
息苦しいし、生き苦しい。
あっちがそこまでいい所かと問われても、そうだとは答えにくい。
だが、こっちに比べれば少しは生きやすい。
上着のポケットの中の携帯が振動し始め、メールか着信の有無を知らせた。
「…中丸からだ」
講義に出ないのを心配してきた中丸からのメールに、街中で吹き出してしまった。
幸い周りには気づかれていなくて助かったけれど。
「……明日は来いよ、か」
明日が来るのが怖いと、思ったことがある。
不確かな未来に希望をかけても、何もならないと思っていたことがある。
根拠は分からないけれど、そういう考えがあった。
今ではもうその考えも薄れたけれど、あの時の考えの意図は今でも分かっていない。
「…おっ、と」
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